「ソーシャルグッドカンパニーでありつづける」というミッションのもと、フードロス削減を目指すショッピングサイト「Kuradashi」を運営する株式会社クラダシ。2023年6月には、東京証券取引所グロース市場に上場し、さらなる成長を目指しています。 2022年5月、将来性と拡張性の高さからECプラットフォームとしてShopify Plusを採用し、サイトをリニューアル。次の成果を達成しました。 Shopify Plus導入による成果
- システムが堅牢化し、ダウンタイム0を実現
- テンプレートとアプリ利用による効率化でマーケティング施策数が2倍
- 主要事業の売上増(企業全体で前年比1.4倍)
今回は、Shopify導入までの過程と成果について、株式会社クラダシ 執行役員CTO兼CPO 事業推進本部 本部長 兼 開発部 部長 城前圭毅氏と事業推進本部 マーケティング部 部長 小手川大介氏に話を聞きました。
ソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」。まだ食べられるにもかかわらず捨てられてしまう可能性のある食品などをお得な価格で販売し、売上の一部で社会貢献活動を支援する仕組みで注目を集めている。
長期的な視野で将来性に期待し、Shopify Plusを採用
Shopify Plusでリニューアルする以前は、オープンソースのECプラットフォームを利用していたクラダシ。目下の課題だったのは、サーバーの強度でした。 「テレビCMが放映されるなど、瞬間的にトラフィックが急増するスパイクと言われる状態になると、サーバーが落ちてしまい、機会損失に陥っていました。それに、深夜に放映が予定される場合、サーバーダウンに備えて、開発担当者が張り付いていなければなりませんでした。(Shopify Plusで)リニューアル以降はダウンタイムが0になり、機会損失の回避に加えて、開発担当者の心理的安全性を担保した体制を整えることができています」(城前氏)
株式会社クラダシ 執行役員CTO兼CPO 事業推進本部 本部長 兼開発部 部長 城前圭毅氏
以前のプラットフォームでは、セキュリティをはじめとする、テクノロジーの変化に応じた最適な状態に保つためのメンテナンス負荷が高く、相応の体制が必要でした。しかし、取材時点でのクラダシの開発部は、CTOである城前氏を含め6名と少数精鋭。Shopify導入により負荷が軽減し、リソースを別に避けるようになったのは大きな成果でした。
「一方で、私たちは、UIに関して自分たちでカスタマイズしていきたいという方針を持っていました。エンジニアがコードを触ることができる状態が望ましいため、カスタマイズ性も高いShopifyが適していました。実際、リニューアルに際しては、配色やデザイン性も大きく見直すことができました」(城前氏)。
また、別のShopifyの特長として、サードパーティーを含め、さまざまな追加機能がアプリとして提供されていることがあります。クラダシでもリニューアル時に積極的に活用し、「定期購買」の導入コストを軽減できたと言います。
「当社のサブスクリプションサービスで送料が無料になる月額制のプレミアム会員があるのですが、Shopifyアプリの『定期購買』機能で実装しました。さらに、『Matrixify』というShopifyアプリを利用することで、データのエクスポート・インポートが効率的に実行できました。当社の仕組みにフィットさせるためのカスタマイズは一部必要でしたが、アプリの利用により迅速に導入できました」(城前氏)。
毎月1回20点以上の商品の詰め合わせを送る「ロスおたすけ定期便」もリニューアルで新たに実現できた。
さらに、Shopifyの商品・受注処理データと他システムとの連動性についても「データが散在しない」と評価しています。
「リニューアルは、短期ではなく長期的な視点で話し合って進めました。Shopifyの将来性の高さはよく耳にしており、実際にアップデートなどメンテナンスが頻繁に行われています。サーバーやセキュリティなどシステムの堅牢性と、ECプラットフォームとしての将来性が採用の決め手になりました」(城前氏)。
マーケティング施策数が倍増。前年比売上高140%
Shopifyにより負荷低くリニューアルを実施し、土台を整えることができた「Kuradashi」。さらに拡張性の高いシステムが、マーケティング活動にも大いに貢献します。
「リニューアル以前は、たとえばクーポン施策ひとつ実施するにも運用負荷が高いのが課題でした。リニューアル以降は、UIが親しみやすく、誰でも使いやすくなった効果は大きいです。また、Shopifyアプリをはじめとする既存ツールを用いることで、運用工数は半分になり空いた分を施策の改善に回せるようになりました。月の施策数は以前と比べると2倍になっています」(小手川氏)
株式会社クラダシ 事業推進本部 マーケティング部 部長 小手川大介氏
工数を減らすことができたのは、Shopifyの特長のひとつであるテンプレートの存在が大きかったようです。同社では、ランディングページ(LP)を作る機会が多く、テンプレートによって、マーケティング部の誰もが制作できる容易さに魅力を感じていると言います。
「実際に私自身もLPを作る際、難しくない上、一定のクオリティが保たれている点が良いですね。新たにブロック(ページテンプレート構成のモジュールのこと)を入れたい場合も、開発部に依頼すれば1週間程度で出来上がって、すぐに新しいテンプレートで取り組むことができます。そのスピード感が、私たちの事業ともマッチしています」(小手川氏)
施策を実行したらデータを見て素早く成果を分析し、次の施策の精度を上げることが求められます。Shopifyにデフォルトで搭載されているレポート機能も活用しているようです。
「Shopifyの管理画面上のダッシュボードに、日次データが出てくるのも役立っています。週次の振り返りはデータポータルを使用しているのですが、ECのイロハに当たるような基本的なデータが、デフォルトのテンプレートで見通せるのが良いですね。『今日の売上はどうだった?』といった具合に、知りたい数字がパッと見られますし、深掘りする際に通常なら工数がかかるようなデータを出しやすいのが良いところです」(小手川氏)
個別の施策だけでなく、長期的な視野でのマーケティング計画にも改善が見られました。催事にあわせて施策に取り組む、いわゆる「52週販促」が行えるようになったのです。
「リニューアル以前は特集ページがありませんでした。リニューアル後は、2022年のおせち特集の際に、テンプレートを用い、それに工夫を重ねてより見やすい特集ページのテンプレートを作成しました。社内では編成表と呼ぶ、直近の催事スケジュールをまとめたものがあるのですが、それにあわせた運用が行えるようになっています。1つひとつの工数の見積もりが出せるようになり、施策の数も増えています。結果的に、企業全体の売上高が前年比で1.4倍(2022年6月期と2023年6月期予想を比較)となりました」(小手川氏)
OMOやチャネルを横断したデータ統合に期待
ECサイトリニューアルにより、システム、マーケティングとも負荷が軽減され、リソースの再配置・最適化ができました。約1年で売上という成果も出ています。次に見据えるのはオフラインにもデジタルを取り入れ、オンラインとつなぐOMO(Online Merges with Offline)です。クラダシでは2023年5月に、初の常設店舗を開設しています。
「オフラインをしっかりと動かしていくためにも、データ統合がひとつのポイントになりそうです。日本でもPOSとデータがつながると、さらに成長を描けると思います」(城前氏)
「データ統合に関して言えば、Shopifyの分析スキームにさまざまなデータが統合できると良いですね。現状は個別の広告の管理画面とShopifyの管理画面を行き来するといったことを行っていますが、たとえばリスティング広告とアフィリエイト広告など、チャネル別に分析したいといったニーズは出てきています。データ統合と分析できる機能がECプラットフォームに集約されると、より高度な施策が実行できるのではないかと期待しています」(小手川氏)
リニューアル以前は、たとえばクーポン施策ひとつ実施するにも運用負荷が高いのが課題でした。リニューアル以降は、UIが親しみやすく、誰でも使いやすくなった効果は大きいです。また、Shopifyアプリをはじめとする既存ツールを用いることで、運用工数は半分になり空いた分を施策の改善に回せるようになりました。月の施策数は以前と比べると2倍になっています