創業6年で年商43億を達成したZ世代向けアパレル企業 yutori:Shopifyの拡張性が支えた急成長の秘訣

yutoriは、Z世代に向けたアパレルブランドを30以上展開する急成長中の企業です。2018年に創業し、ECサイトでの販売を中心に、わずか6年足らずで年商43億円を達成。2023年12月にはアパレル業界史上最短で東証グロース市場に上場を果たし、リアル店舗の展開やOMO(Online Merges with Offline)戦略も進めています。

同社では創業間もない頃からECプラットフォームにShopifyを活用しており、事業規模の拡大に合わせてプランをアップグレードさせてきました。現在、自社ECサイト「YZ STORE(ワイジーストア)」はShopifyの最上位プランであるShopify Plusを使っており、以下のような成果を上げています。

【Shopify Plusプラン導入による成果】

  • 売上成長率 170%
  • CRM Plus on LINEで32%の会員がLINE連携済み
  • チェックアウトカスタマイズにより住所不備が年間約700件減少

今回は、yutoriでマーケティングプロデューサーを務める濱田栞氏と、サプライチェーンプロデューサーである青嶋剣士郎氏に急成長の裏でShopifyをどのように活用しているのか、詳しく話を伺いました。

yutori マーケティングプロデューサー 濱田栞氏(右)、サプライチェーンプロデューサー 青嶋剣士郎氏(左) yutori マーケティングプロデューサー 濱田栞氏(右)、サプライチェーンプロデューサー 青嶋剣士郎氏(左)

6年で市場を席巻、成長の鍵を握った自社ECサイト

yutoriは、創業者の片石貴展社長が立ち上げたInstagramアカウント「古着女子」からスタートした企業です。当初は古着コミュニティーの盛り上がりを背景に、オンラインでの古着販売を手掛けていました。しかし、古着の場合、需要があっても一度に販売できるのは一着に限られます。この在庫の制約を克服するために、yutoriは古着風デザインのオリジナル商品販売に方針を転換します。

以降は、SNSを駆使した独自のマーケティング戦略によって、若者のニーズを的確に捉えながら急成長を遂げました。新ブランドの立ち上げや買収を重ね、現在は30以上のブランドを展開しています。この成長の背景には、多くのブランドを運営する中で築いた同社独自のブランド管理システムが存在します。

その一つに「Yリーグ」があり、立ち上げ期の「Y5」から定着期の「Y1」まで、ブランドの成長フェーズをランク分けして管理しています。立ち上げから1年以内に「Y4」に昇格できなければ撤退するなど、明確な基準を設けることで、効果的なブランド運営を実現しています。

そして、yutoriの成長の核となっているのが自社ECサイト「YZ STORE」です。yutoriが展開する複数のブランドを一元的に販売しているモール型サイトで、同社の売上の大部分を占めています。

「以前はブランドごとにECサイトを運用していましたが、2022年に各ブランドを一つのモールに統合した『YZ STORE』をオープンしました。これにより、新しく生まれたばかりのY5ランクのブランドも集客がしやすくなり、事業を立ち上げやすい環境が整いました。現在は月平均約50万セッションを獲得し、重要な販売チャネルとなっています」と、濱田氏は語ります。

「YZ STORE(ワイジーストア)」では、9090、Younger Song、HTH、MySugarBabe(MSB)など、yutoriの多彩なブランドを販売している。

ビジネス拡大に伴いアップグレード:Shopify Plusプランでスケール体制を整備

yutoriはビジネスの開始後まもなく、将来的な拡張性を重視しShopifyを利用開始。当初はBasicプランを選び、ビジネスの成長に合わせて段階的にプランをアップグレードし、現在では最上位プランであるShopify Plusを使っています。

青嶋氏は、「売上が安定して伸びてきたところでShopifyプラン(旧・スタンダードプラン)、さらにAdvancedプラン(旧・プレミアムプラン)へと、規模に応じてプランを切り替えていきました。そしてストリートブランドをYZ STOREに統合する際にShopify Plusプランへと移行し、さらなる売上拡大を目指すための環境を整えました」と振り返っています。

Shopify Plusプランでは拡張性がさらに強化され、Plusプラン限定の機能や豊富なアプリがyutoriの成長に欠かせない土台となりました。例えば、Plusプラン限定のLINE連携アプリ「CRM PLUS on LINE」は、LINE連携のシングルサインオンを実現。ECサイト上の会員IDとLINEのユーザーIDを連携させ、新着情報や再入荷通知など、顧客が求めるメッセージの送信ができるようになり、CRM施策の一部を担えるようになりました。

また、Shopify Plusプランのカスタマイズ可能なチェックアウト機能「Checkout Extensibility」も売上拡大において重要な役割を担いました。特にECを初めて利用するような若年層の顧客が多いyutoriにとって、正確な配送先入力をサポートする機能は、住所不備による注文のミスを減少させ、顧客満足度の向上に貢献しています。青嶋氏は、「Checkout Extensibility機能を使って、Shopify Plusプラン限定のアプリ『スマート配送先バリデーション』を追加したことで、自動で配送先住所の住所不備をチェックアウト画面で確認できるようにしました。購入者により便利な体験を提供できるようになったうえ、住所不備の問題も減り、スムーズな配送が実現できるようになりました」と説明します。

【Shopify Plus導入による成果】

  • 売上成長率 170%
  • CRM Plus on LINEで32%の会員がLINE連携済み
  • チェックアウトカスタマイズにより住所不備が年間約700件減少

一般的にECビジネスでは、事業規模の拡大に伴いプラットフォームの乗り換えが必要になるケースが多いですが、yutoriはそのような課題に直面することなく、Shopifyの柔軟な拡張性を活かすことで急速な成長を遂げてきました。

青嶋氏は、「もし別のプラットフォームを使っていたら、事業規模に合わせたプラットフォームの移築や拡張性の問題など、さまざまな課題に時間を費やさなければならなかったかもしれません。しかし、Shopifyではそうした心配がなく、規模の拡大に併せてプランを変えるだけで済んだため、私たちはいかに事業をスケールさせるかという点に集中できました。それこそがShopifyの大きな価値だと実感しています」と語ります。

yutoriサプライチェーンプロデューサー 青嶋剣士郎氏 yutoriサプライチェーンプロデューサー 青嶋剣士郎氏

エンジニア・EC担当者なしで急成長を実現したShopify活用法

「yutoriには社内にエンジニアがいません。Shopifyエキスパートのパートナーの協力や、Shopifyおよび周辺アプリを使えば実現したいことを迅速に実装でき、ブランドの成長に大きく寄与していると感じています。なおかつ、当社はEC専任担当者も不在ですが、社員の9割はShopifyに触れています」と青嶋氏。

EC担当者がいない体制でも、「Shopifyの直感的な操作性のおかげで、ブランドマネージャーやクリエイティブメンバー、サプライチェーン担当者など、それぞれが各自の役割に応じてスムーズに管理できる仕組みが整っています」と評価しました。

エンジニア・EC担当者なしで、これらの成果を支えたShopify活用法を詳しく見ていきましょう。

決済手段の多様化に対応できるShopify独自の決済サービス

Shopify Payments」は、yutoriがオンラインストアを効率的に運営するために活用している機能の一つです。このシステムにより決済手段の多様化を実現し、ユーザー体験を向上させています。さらに、「後払い」オプションが学生などの若年層に支持され、購入機会の損失を防ぐ効果も発揮しました。特に、即完売が予想される人気商品の販売では、顧客の購買意欲を後払いオプションが支える役割を果たしました。

濱田氏は「『9090』など人気のブランドで先着販売が盛んだった頃、Shopify Paymentsの一部として提供されているワンクリック決済機能『Shop Pay』への登録がお客様同士の間でおすすめされていました。登録しておけば住所や決済情報の入力が都度不要であるため、購入の可能性が高まる便利な仕組みとして自然と広まったのです」と振り返ります。現在、同社顧客の「Shop Pay」の利用率は30%を超え、スムーズな決済がカート落ちの減少に貢献しています。

ECサイトから簡単にモバイルアプリ制作

Shopifyでは、作成したECサイトをそのままモバイルアプリに取り込むことができ、アプリ構築のコストを抑えつつ、yutoriの顧客にとって使いやすい環境を提供しています。yutoriは株式会社Stackが提供するサービス「Appify」を利用し、YZ STOREをアプリ化することで、顧客の利便性を向上させ、売上アップにつなげています。

青嶋氏は、「アプリでは、YZ STOREと同じ商品を取り扱っており、裏側の設定も基本的に同じです。そのためアプリ構築に多額のコストはかかりません。また、お客様の多くがアプリネイティブ世代であるため、Webよりもアプリでの購入が好まれる傾向にあります」と語ります。また、アプリ利用者は、リピート率や顧客単価が向上する傾向にあることから、新作商品をWebより5分早くアプリで購入できるといった施策も実施しています。

OMO実現に向けたリアル店舗とデータ連携

yutoriはOMO戦略の一環として「Omni Hub(オムニハブ)」アプリを導入。実店舗とオンラインストアの会員情報や売上情報を一元化しています。

このアプリを活用することで、注文情報、在庫情報、会員情報を連携させ、CRMにつなげることで統合的な顧客体験を実現しています。これにより、オンラインとオフラインでの在庫管理や顧客データの一元化がスムーズに行われ、業務の効率化と顧客満足度の向上に貢献しています。

「若者帝国」構築に向けたyutoriの次なるステージ

Shopifyの機能を効果的に活用し、ビジネスの成長を促進してきたyutori。今後も、Shopifyの柔軟なプラットフォームを活かしながら、新たな挑戦を続け、さらなる成功を目指しています。

今後の展望として、5年後にブランド数を70にまで拡大し、「若者帝国をつくる」という壮大なビジョンを掲げています。「現在の倍以上のブランド数まで増やす必要がありますが、ブランドを立ち上げる仕組みは整っているので、これからどんどん増やしていきたいです。それにはやはり、YZ STOREが今後の成長において重要な役割を担うと考えているので、これからはこのモールのブランディングに注力していきたい。それを一緒に考えてくれる仲間を積極的に採用中です」と濱田氏は語ります。

yutori マーケティングプロデューサー 濱田栞氏 yutori マーケティングプロデューサー 濱田栞氏

また、国内市場だけでなく海外展開も進めており、今年度中に台湾での出店を予定しています。2024年7月にはテストマーケティングとして台湾でポップアップストアを実施。想定以上の売上を達成したことも、今後の越境ECへの期待を膨らませる結果となりました。青嶋氏は「Shopifyが提供している機能を使って、これから越境ECを伸ばしていきたい」と語っており、海外での成長戦略の一環として、引き続きShopify Plusプランを活用していく方針です。

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アパレル・アクセサリー

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