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生活の木がShopify Plus導入で攻めのECに転換、B2B EC強化で顧客体験と収益を向上

「生活の木」はWellness&Well-beingをコンセプトに、「自然」「健康」「楽しさ」のある生活を提案している人気ブランドです。国内外の提携農園から厳選したハーブや精油、植物油を仕入れ、これらを用いたスキンケアやアロマグッズ、食品を製造・販売しています。

全国100店舗以上の直営店とECサイトを通じて商品を届けると同時に、法人向け取引(B2B)にも積極的に取り組んでいます。B2B事業では、サロンやクリニック、助産施設など、様々な業種の法人顧客に対して、業務用商品を提供しているほか、お客様からの依頼に基づいてオリジナル製品を製造するOEM事業も展開しています。

2023年、同社はShopifyのPlusプランを導入し、EC事業の大規模なリニューアルを実施しました。それまで一体化していたB2CとB2Bの機能を分離し、それぞれの特性に最適化したサイトを実現。さらに、店舗とECをシームレスに統合する取り組みの強化により、運営の効率化に加えて、顧客体験を向上させています。

【ShopifyのPlusプラン導入による成果】

  • 数百万円規模となっていた未回収債権が0に
  • 1日20件以上発生していたFAX注文が0、電話問い合わせも1桁台に
  • 運営効率化により、自社ECの営業利益率が2%増加

今回は、株式会社生活の木 EC事業本部の中村佳央氏と久保庭侑氏のお二人に、ShopifyのPlusプラン導入に至った背景やその成果、さらにB2B専用サイト「ビジネススマート」のリニューアルを通じたB2B EC事業の強化、そして今後の展開について伺いました。

株式会社生活の木 EC事業部 デピュティーゼネラルマネージャー 中村佳央氏(左)、EC事業部 マネージャー 久保庭侑氏(右)

 

EC事業の2つの課題とリニューアルの決断

生活の木では長年にわたり、ほぼフルスクラッチで開発された独自のECシステムを運用していましたが、いくつかの大きな課題に直面していました。特に顕著だったのは、「B2CとB2B機能の混在」と「店舗と通販の顧客データ分断」という2つの問題です。

B2CとB2B機能の混在による課題

生活の木では従来、一般顧客(B2C)と法人顧客(B2B)が同じECサイトを利用していました。しかし、この構造では両者の異なるニーズに十分に応えられず、どちらの顧客にとっても使いにくいUIとなっていました。

一般顧客は主に個人用に少量を購入するのに対し、法人顧客は業務用に大量購入を行います。それぞれの購入する商品の種類や価格設定も異なるため、B2CとB2Bを同じプラットフォーム上で管理することに無理が生じていました。

例えば、法人顧客には購入数量や業態に応じて特定の価格や商品を提示する必要がありますが、B2Cと混在したシステムでは十分に対応できませんでした。そのため、法人顧客にとって商品検索や購入手続きに余計な手間がかかり、利便性が大きく損なわれていました。その結果、顧客満足度が低下し、再購入への意欲も失われていました。

店舗とECの顧客データ分断による課題

店舗とECで顧客データが別々に管理されていたため、同じ顧客の購買行動を一貫して把握できないという課題もありました。このデータの分断は、効果的なマーケティング施策の実施や、パーソナライズされたサービスの提供を妨げ、顧客体験の向上を阻害する要因となっていました。

これは一般顧客だけでなく、法人顧客にも影響を及ぼしていました。生活の木の法人顧客には個人事業主も多く、消費者と類似した購買行動やニーズを持っています。例えば、店舗で商品を確認した後にオンラインで発注したり、逆にオンラインで商品を調べた後に店舗で購入したりするケースも多く見られました。

しかし、データの分断により、こうした行動を正確に把握できず、一人ひとりに最適化された体験が提供できていませんでした。その結果、顧客満足度の低下やブランドへの信頼感の低下につながる危険性があったのです。中村氏は「当社の法人顧客は一般のお客様と同じように店舗とECをスムーズに行き来できる購買体験を望んでいる方が多く、店舗とECで一貫した体験を提供することが非常に重要です」と語ります。

コロナ禍では、このデータの分断による影響がより顕著になりました。緊急事態宣言に伴う店舗営業の制限により、多くの顧客がECサイトを利用するようになったものの、既存システムでは急激な変化に対応できない状況が続いていました。「こうした状況を受けて、店舗とECを一体化させる『ユニファイドコマース』の考え方に基づき、顧客体験を最適化する新たなシステムへの移行が必要と判断しました」と中村氏は振り返ります。

株式会社生活の木 EC事業部 デピュティーゼネラルマネージャー 中村佳央氏

 

B2B事業特有の注文処理や債権管理に課題

B2B EC事業では、さらに独自の課題も存在しました。それはアナログなB2B業務プロセスが招いていた、顧客体験の低下と運営負担の増加です。

注文処理の非効率性:

法人顧客からの注文の多くはFAXや電話で受け付けており、スタッフが手作業で対応していたため、処理に時間がかかり、迅速な対応が困難でした。

顧客登録プロセスの遅延:

さらに、大きな問題だったのが取引前に行われる法人顧客登録プロセスです。与信管理に必要な書類のやり取りを郵送で行っていたため、1件の取引が完了するまでに1週間以上かかっていました。すぐに商品を手に入れたい顧客に向けて最適な顧客体験を提供できていない状況でした。

リソースの圧迫と債権管理業務の負担:

加えて、このような運用は法人顧客の利便性を欠くだけでなく、社内のリソースを圧迫する原因にもなっていました。特に深刻だったのが、債権管理業務です。法人顧客に対しては入金管理・催促・債権回収を社内のスタッフが行っており、未払いの顧客に対する後追いの電話は、大きな負担となっていました。

 

「こうした業務に時間を取られることで、スタッフが本来注力すべき売上向上のための業務に集中できない状況が続いていました」と久保庭氏は振り返ります。非効率な業務プロセスを改善し、B2B事業全体の運営効率を向上させることが急務となっていたのです。

「生活の木」B2B専用サイト「ビジネススマート」

 

Shopify Plusプランで叶えた、店舗と連動した自社運営EC

生活の木は、従来のほぼフルスクラッチでのECシステムの課題克服を目指し、Shopify Plusプランの導入を決断しました。中村氏はShopifyを選んだ理由を「『自分たちでECサイトを運営したい』という想いを叶えてくれるプラットフォームだった」と語ります。

従来のECシステムでは、改修や新機能の追加に多額のコストと時間がかかり、わずかな変更でもエンジニアのサポートが必要でした。しかしShopifyでは、必要な機能をアプリで簡単に追加でき、ノーコードで運用が可能です。この柔軟性は、同社にとって大きな魅力となりました。

長年の課題だった「店舗との連動」を実現できる点も、Shopifyを選んだ理由の一つです。店舗のPOSシステムとShopifyを連携させることで、店舗とECを一体化した施策を展開することが可能になり、店舗とECのデータを一元管理し、顧客に一貫した体験を提供する基盤が整いました。特に、業務を自動化するためのフローを組むことができる機能「Shopify Flow」が効果的でした。

  • Shopify Flow:生活の木では、ポイントシステムやメールマーケティングの自動化にも活用しています。以前は、手作業で行われていたポイント管理やメール配信が「Shopify Flow」を活用することで効率化されました。これによりリソースの負担を軽減し、より戦略的な施策へ注力できる体制が整いました。

さらに、オムニチャネル会員連携アプリ「Omni hub」を活用し、「スマレジ」とShopifyを接続することで、店舗でのポイント付与作業を自動化しました。それまでは店舗スタッフが手動でポイントを計算・付与していたため、ポイントの付け忘れや計算ミスが発生することがありました。現在では、スマレジ側で設定されたボタンを押すだけで、Shopify Flowが作動し、ポイントが付与される仕組みが整っています。この改善により、ポイント付与におけるミスが防止され、店舗スタッフの負担も大幅に軽減されました。

また、Shopifyの導入により、顧客データの活用を基盤としたマーケティング活動が本格化しました。従来は実店舗の顧客情報とECの注文情報が分断されていたため、メルマガやLINEのメッセージをパーソナライズして送ることができていませんでした。しかし、Shopifyを活用して購買履歴や行動データを一元管理されたことで、顧客属性が明確化され、ターゲットに応じたマーケティング施策が可能になったのです。

「Shopifyを選んだ決め手は他にもありました」と中村氏は続けます。「Shopifyは、複数ストアを容易に運営できる点や越境ECへの対応機能が可能な点も選定における非常に大きなポイントでした。Shopifyなら、国内外の市場に同じプラットフォーム上で柔軟に対応できるため、海外市場への進出を目指す私たちにとって最適な選択肢でした」と語ります。

「システム連携、マーケティング、複数ストア運営、越境EC。Shopifyは、これらすべてを一つのプラットフォームで実現できる理想的なプラットフォームです。」

株式会社生活の木

中村佳央氏 — EC事業部 デピュティーゼネラルマネージャー

 

ShopifyでB2B EC事業効率化と新たな事業成長基盤の構築を実現

生活の木は、ShopifyのPlusプランの導入により、これまで抱えていた課題を解消しながら、EC事業全体の運営効率を向上させました。その結果、新たな成長の基盤を築き、さらなる事業拡大を加速させています。

現在、同社はB2C向けの「生活の木」公式サイト、B2B専用サイト「ビジネススマート」、そして感性重視の商品を展開する「NOWHERE NOWHERE(ノーウェア ナウヒア)」の3つのECサイトを運営しています。各サイトが独立して機能することで、顧客ニーズに最適化された運用を実現しており、それぞれの顧客層に対してより効果的なサービスを提供しています。

特にPlusプランのB2B機能で構築したB2B専門サイト「ビジネススマート」は、生活の木のEC事業全体の効率化と利便性を飛躍的に向上させました。導入による主な成果として、以下の3つのポイントが挙げられます。

1.債権管理の改善で未回収債権が0に、大幅な業務改善を実現

以前は法人向けの「掛け払い」において、数百万円規模の未回収債権が発生していましたが、Shopifyと決済代行サービス「Paid」を併用することで、これを完全に解消しました。

「Paid」と「Quick Order Printer かんたん帳票出力」アプリにより、請求業務や与信管理が自動化されました。これまで手作業で行っていた請求書の発行や督促業務は不要となり、債券管理のプロセス全体が効率化されました。

さらに、Shopifyの管理画面は直感的で使いやすく、ECに特化していない人材でもすぐに活用できます。以前は、スクラッチでシステム会社に依頼していた修正や機能追加も、現在では現場スタッフが自ら対応できる環境が整いました。EC運営の内製化が進んだことで、迅速な対応が可能となり、そして大きな業務効率化を実現しました。

2.1日20件以上FAXと関連電話問い合わせが0になり、収益に直結する業務へシフト

リニューアル前は、注文のためのFAXが1日20件以上届き、それに伴う問い合わせも多発していました。しかし、ShopifyのPlusプランの導入により、FAX注文とそれに関わる電話問い合わせはゼロ化を実現しました。また、取引開始に伴う法人登録もFAXからWeb申請へと切り替えたことで、申請から利用開始までにかかる時間が従来の1週間程度から半日以下へと短縮されました。こうした業務プロセスの改善により、事務作業に関わる人数は4〜5人から2人へと半減され、空いたスタッフをメルマガを活用した売上拡大など収益向上に直結する業務へと配置できるようになりました。

これまで多くの時間を費やしていた債権回収など負担の大きい業務が大幅に削減され、スタッフがやりがいを感じられる職場環境が整備されました。その結果、ECチーム全体の従業員満足度も向上しています。

加えて、「商品の一括注文フォーム(Wholesale Order Form & ReOrder)」を導入することで、法人顧客は必要な商品を簡単にまとめて購入できるようになりました。注文処理が完全にオンラインで完結できるようになったことで、業務負担の軽減だけでなく、法人顧客の満足度向上にもつながっています。

  • Wholesale Order Form & ReOrder:複数の商品を数クリックで簡単にカートに追加できる「一括注文フォーム」を作成できるアプリ。B2B顧客は、複数の商品を同時に購入するケースが多く、このフォームを活用することで、購入プロセスの効率化が実現できます。迅速な購入体験を提供することで、顧客満足度を向上させ、注文数の増加につなげています。

生活の木 ビジネスマート内「一括注文フォーム」

3.運営効率化により、自社ECの営業利益率が2%増加

ShopifyのPlusプラン導入により、EC運営全体の業務プロセスの改善と自動化が進み、運営効率化が直接的な収益向上にも結びついています。久保庭氏は、「これまでリソースが割かれていた業務を効率化できたことで、戦略的な施策にリソースを振り向けられるようになった点が、収益性向上の大きな鍵になりました」と語ります。

株式会社生活の木 EC事業部 マネージャー 久保庭侑氏

 

戦略的な施策へのリソース配分の一環として、データ管理を抜本的に見直すことでマーケティングの精度を大幅に向上させました。

従来は、顧客の業態分類を基幹システムで管理していましたが、スタッフが手動で番号を付与する仕組みだったため、正確な分類が困難でした。例えば、全く異なるニーズを持つクリニックと助産施設が同じカテゴリーに分類されるなど、正確性に欠けていました。

この問題を解決するため、Shopifyのデフォルト機能である「メタフィールド」を活用。メタフィールドは、フォーム上に新たに情報入力欄を追加でき、そこで入力されたデータを活用できる機能です。これにより顧客が登録時に自身の業種を正確に選択できるようになり、データの精度が大幅に改善しました。

中村氏は「注文数を分析することで、業態ごとの動向を正確に把握できるようになりました。具体的には、小売業は依然として厳しい状況ですが、サロンや温浴施設などの体験型サービスを提供する業態の需要が伸びていることがわかりました」と説明します。

さらに、この仕組みによって、業態ごとの特性に応じた最適な商品やコンテンツを提案できるようになりました。中村氏は続けて「例えばサロン業界と一口に言っても、ネイルサロン、エステサロンなど、業態によって多様なニーズが存在します。従来は『サロン』という大分類にとどまり、それぞれに刺さる情報が届けられていませんでした。しかし、Shopify移行後、業態ごとに顧客を正確に分類できるようになり、それぞれに最適化された商品やコンテンツを届けられるようになりました。その結果、客単価やコンバージョン率(CVR)の向上を実現しています」と語ります。

また、「Shopify Wholesale Lock Manager」を導入することで、ECサイト上でも法人顧客のニーズごとに異なる商品を提案しています。

  • Shopify Wholesale Lock Manager:従来のB2B取引では、掛け率など取引条件が顧客ごとにバラバラで統一性に欠けていました。Shopify導入のタイミングに合わせて、法人顧客向けの価格や商品体系の見直しを実施。その上で、Wholesale Lock Managerを活用して、法人顧客のニーズごとに異なる商品、価格、ロット数を緻密に制御することで、B2B取引の効率化を実現しました。

一方で、大口顧客に対しては従来通り、営業担当者による個別対応を行い、柔軟な運用を維持することで、多様なニーズに応えています。

こうした取り組みを通じて、生活の木は運営効率化とコストの削減を達成し、社内リソースを収益向上につながる業務に振り向けることができるようになりました。その結果、利益構造が改善され、自社ECの営業利益率を2%向上させることに成功しました。

守るECから“攻める”ECへ。「生活の木」の今後の展望

ECサイトのリニューアルを通じて運営効率化と成長の基盤を築いた「生活の木」は、さらなる成長に向けて新たな挑戦を続けています。

現状、売上の約70%をリピーターに依存しており、新規顧客の獲得と定着率を高めることが重要になっています。中村氏は「新規顧客をいかにファンに育て、リピート購入につなげていくかが、今後の成長の鍵になります」と語ります。

この課題に対応するため、同社ではLINEとの連携を活用した新規顧客獲得を進めています。「これまでは店頭でアプリをダウンロードし、個人情報を入力してもらうオペレーションでしたが、これは初回の顧客にとって手間が大きいです。そのため今後は、LINEを活用して簡単に会員登録ができる仕組みを導入し、初回購入者をより効率的に取り込んでいきたいと考えています」と中村氏は力を込めます。

また、越境ECも重要な成長戦略として位置付け、2025年2月以降、シンガポールを皮切りに台湾、香港向けのストア展開を予定しています。アジア市場への進出を通じて、各地域の市場特性に合わせたサービスを提供し、さらなる事業拡大を目指します。

最後に、Shopifyへのリプレイスが成功した背景には、同社の組織文化が大きな原動力となっています。従業員一人ひとりに裁量を与えるボトムアップ型の文化が、Shopifyの可能性を最大限に引き出しています。中村氏は「私たちの強みは、従業員一人ひとりが裁量を持ち、挑戦を恐れずに主体的に行動できる環境にあります」と自信を示します。

このボトムアップ文化と、Shopifyの直感的で使いやすいUI・UXが相乗効果を生み、現場の潜在的な創造性を具体的な成果へと昇華させています。例えば、以前は月10万円の債権回収業務に従事していたスタッフが、現在はメルマガ制作を担当し、1本あたりのメルマガで10万円以上の売上を生み出すようになりました。また、現場のメンバーが自ら新たなShopifyアプリを発見し、積極的に実装を進めるなど、アイデアをすぐに実行に移せるようになっています。これは、Shopifyの拡張性の高さに加え、生活の木の社風が、従業員に主体性を持って挑戦する機会を与えているからこそ実現できた成果です。

このダイナミックな企業文化を基盤に、生活の木は今後も新しいアイデアや取り組みを柔軟に採用し、変革への"攻め"の姿勢で持続的な成長を目指していきます。

Industry

Health & beauty

Products

Shopify Plus, B2B, Shopify Flow

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