毎日コーヒーを飲む人の割合は4人に3人で、その中でも自宅でコーヒーを飲む人は約75%います。自宅でコーヒーを楽しむ人は多いため、コーヒー豆のネット販売は非常に魅力的なビジネスです。ここでは、コーヒー豆のネット販売の始め方や販売の際に必要となる資格、食品表示義務を紹介します。ECサイトを開設して、ネット販売を始めたい方は参考にしてください。
コーヒー豆販売のメリット:コーヒー豆焙煎・販売は儲かる?
適切なマーケティング戦略を導き出し、ブランド力を強めていけば、コーヒービジネスは大きく儲かる可能性があります。コーヒーは手に入りやすく業界には競合も多いですが、ビジネスチャンスを秘めています。
コーヒー豆販売のメリットは以下のとおりです。
- ターゲット人口が広い:コーヒーは世界中でも日本でも特に多く飲まれている飲み物であるため、幅広い消費者層が存在します。既存のブランドに満足していない顧客や、新しい味を求める顧客にアプローチすることが可能です。
- 小規模ブランドが強みを活かせる:コーヒー好きの人たちは、個性的なアプローチに魅力を感じやすい傾向にあるため、コーヒー豆販売は小規模ブランドが強みを活かしやすいと言えます。大きなブランドの方が品質もサービスも良いと考えられがちですが、コーヒーのようなコモディティ商品の場合、この傾向は当てはまりません。
- ニッチな需要がある:コーヒービジネスはブランディングが鍵となることから、特定の狭い顧客層をターゲットとするようなニッチな商品も工夫次第で販売数を伸ばしやすい傾向にあります。
広く入手できるというのはつまり、その商品を求めている顧客が多いことの裏返しであるため、販売がしやすいということです。そのため、コーヒー豆販売は、うまくブランディングを行うことでビジネスとして成立しやすいと言えるでしょう。
コーヒー豆のネット販売の始め方:6つの手順
1. 焙煎豆を仕入れるか自家焙煎を行うか決める
コーヒービジネスをスタートする場合、すでに焙煎してあるコーヒー豆を仕入れて販売するのか、自家焙煎のコーヒー豆を販売するのかを決めて、販売するコーヒー豆の準備をする必要があります。
焙煎豆を仕入れる
すでに焙煎された状態のコーヒー豆を仕入れれば、焙煎する手間が省けるため、自家焙煎よりも手軽に販売を開始できます。またこの際にドロップシッピングを利用すれば、商品をいったん手元に置くことなく顧客の元に届けることができます。
- メリット:間接的にかかる費用が少なく、販売工程が単純
- デメリット:販売できる商品の自由度が低く入手性のコントロールができない
- おすすめな人:コーヒー豆そのものでなく、マーケティングやブランディングに力を注ぎたい人
- 向いていない人:焙煎の経験が豊富である人やカフェの経営者。あるいは豆や焙煎具合にこだわりたい人
自家焙煎を行う
商品づくりにこだわりたい場合は、自家焙煎した豆をECサイトで販売するのが良いでしょう。自家焙煎の場合、作業量は当然増えますが、やりがいも大きくなります。
- メリット:販売できる商品の自由度が高い
- デメリット:作業量が多く、時間がかかる
- おすすめな人:焙煎技術を学ぶ意欲があり、そのための時間がある、またはフォローしてくれるスタッフがいる人
- 向いていない人:ビジネスにかけられる時間や、リソースが限られている、またはマーケティングやビジネス運営のほうに関心がある人
2. 仕入先を見つける
焙煎豆を仕入れるか自家焙煎するかを決めたら、そのコーヒー豆を提供してくれる仕入先を見つけます。豆の質はブランドへの評価に直結するため、仕入先の選定は重要です。マーケティングに力を入れることは非常に大切ですが、豆の品質が悪ければ元も子もありません。自分で焙煎する場合も、生の豆を購入する仕入先を選定するのが大切になります。
仕入先を探すときのポイントは以下の三つです。
- 商品の品質:サンプルを取り寄せるか、気になる商品を少量注文し、求める味や香りかを確認しましょう。経験豊富な焙煎士なら自分たちの製品が他と比べてどの点で優れているかについて、しっかりと答えることができるはずです。
- カスタマーサービス:コーヒー豆の特徴や風味、どのような客層に人気のコーヒーなのかなどを、問い合わせた際にしっかりと答えてくれる仕入先を探すといいでしょう。カスタマーサービスが充実している仕入先を選べば、顧客に提供できるサービスも自ずから高くなります。
- 価格:予算オーバーの仕入先とは取引したくないと思う人も多いでしょう。コーヒー豆を販売する際には利益を乗せる必要があるため、顧客がどのくらいの価格で購入してくれるかを考えることが重要です。
3. ターゲットとなるニッチ市場を見つける
個人でコーヒー豆を販売する際には、ブランドを前面に出して差別化を図り、こだわりのコーヒー豆を求めている顧客をターゲット層とすることが重要です。コーヒーは銘柄にこだわらず身近で安価に手に入るものを購入する人が一般的に多いため、そうではない層に目を向けることがポイントです。
ニッチ市場とは?
ニッチ市場は、特定の層から需要がありながらも見過ごされがちな規模の小さい市場を指します。大きな市場はすべて、さまざまなニッチ市場に細分化できます。価格帯や年齢、興味、価値観、趣味、居住地域などに基づいて分けていくのが一般的です。
ニッチ市場を狙うメリットは?
ニッチ市場を狙うと競合の数を抑えられるため、競争力を確保できブランドの確立を進めやすくなります。すでにレッドオーシャンである大きな市場で存在感を見せるのは至難の業です。ニッチ市場に照準を合わせ、既存の大手ブランドに満足していない顧客層を狙うことで、小規模ブランドであっても成功できる可能性があります。
コーヒー販売におけるニッチ市場を見つけ出す方法
まずは潜在顧客のニーズや、自社の強み、興味に関して、以下の問いを深堀りすることから始めると良いでしょう。
- 自身にとって理想の顧客とは?
- 潜在顧客の具体的なニーズと課題は?
- 提供する商品は顧客のどのような課題を解決できるか?
ニッチ市場はすぐに見つけるのはなかなか大変ですが、ターゲット層を絞り込み、そうした層特有のニーズについて考えてみると、やりやすくなります。
また、以下のツールや手段も、ニッチ市場を見つけ出す際に活用できます。
- Google検索とGoogleサジェスト:Google検索とGoogleサジェストが、さまざまな切り口や傾向、競合他社の弱点を掴む手がかりとなります。検索をいろいろと試してみましょう。
- マインドマップ:マインドマップは中心となるアイデアのまわりに関連する単語やコンセプトなどを枝葉のように書きだした図を意味します。
- キーワード検索:特定のキーワードについて詳しく調べていくことで、そのキーワードに関連するニッチ市場のアイデアが得られます。また、その市場に潜在的需要があるかどうかの評価もしやすくなります。
- オンラインコミュニティ:興味を持つ人が多い内容や分野については、オンラインで投稿や閲覧者が多い傾向にあります。業界の掲示板、サブレディット、SNSアカウントなどを確認することで、ニッチ市場を見つける手がかりが得られるでしょう。
この段階では、アイデアをいろいろ思いつくことが重要です。アイデアの良し悪しにとらわれることなく、自由に発想したあとで、アイデアを絞り込んだり組み合わせたりしましょう。ベストなアイデアが浮かぶまで待つのではなく、複数思いついたものの中から最適なものを見つける方が良いでしょう。アイデアの内容以上に大切なのが、どう実行するかです。
見つけたニッチ市場か最適なものであるかどうかを判断するには?
商品のアイデアが適切なものであるか、判断する基準はいくつかありますが、結局のところ大切なのは需要があるかどうかです。需要が確実にある商品を販売するための方法は以下のとおりです。
- 顧客を自分で獲得する:SNSマーケティングを行って自社のプレゼンスを高め、顧客を獲得する。やや時間がかかるものの確実な方法です。
- ソフトローンチでテストする:少数の顧客をターゲットにしたキャンペーンを実施し、フィードバックを集め、より大規模な展開に向けて準備する。
- キーワード検索をさらに活用する:ターゲットとするニッチ市場に関連するキーワードの検索ボリュームを確認し、高い売り上げが見込めるかどうかを見極める。
4. 商品ラインナップを決める
ターゲットとするニッチ市場を決めると、ブランドを今後どう構築していくかビジョンが見えてくることでしょう。ですが、ブランディングの前に、商品ラインナップ全体をどのようにしていくかを固めることが重要です。
焙煎したコーヒー豆だけでなく、他の商品も一緒に販売することで、商品の多様化を図れるようになるため、長期的にビジネスが安定しやすくなります。
たとえば、以下の商品を取り扱うのがよいでしょう。
- ケーキやクッキーなど、発送可能な焼き菓子
- キャンドルや芳香剤など、コーヒーの香りのする商品
- チョコレートやアイスクリームなど、コーヒー味の食べ物
- コーヒーマシン、ドリッパー、キャニスターなど、コーヒー関連の製品
- ハーブティーや、ホットチョコレートなど、コーヒー以外の飲み物
- コーヒーマグやボトルなどのオリジナル商品(その他のプリントオンデマンド商品も可。ただし、「コーヒーも売っている雑貨屋さん」にならないために販売する商品は限定する)
何を売るかはブランディング次第ですが、コーヒーブランドなので、コーヒー関連の商品にとどめるほうが良いでしょう。多種多様な商品を取り扱うようにしてしまうと、ブランドのスタイルやビジョンが曖昧になってしまい、ブランドの輪郭がぼやけてしまいます。
5. ブランドの方向性を決める
販売する商品、仕入先、ターゲットとするニッチ市場が決まったら、ブランドの方向性を固めていきましょう。方向性をかっちりと固めることで、マーケティングの際に迷走することなくブランドを確立させやすくなります。
コーヒーブランドは多数存在しているため、他社との違いをはっきりさせることがとりわけ重要となります。ターゲットとするニッチ市場で人々の心を掴めるかどうかが、命運を左右します。
以下の手順に沿って、ブランドの方向付けをしていきましょう。
1. ターゲット層を理解する
ブランドイメージは、顧客層の雰囲気が反映されたものとなるため、ターゲット層がどのように話して何に価値を置き、何に共感するかをよく研究する必要があります。
2. 響くブランドメッセージを考える
ターゲット層に対する解像度を上げたら、次はブランドイメージやブランドストーリーを作り上げていきましょう。顧客に響きそうな言葉や、ブランドを差別化できるような表現を考えます。どのような価値提案をするかも考えていきます。
3. ブランド名を決める
ブランド名は、ロゴやドメイン名、マーケティング戦略などさまざまな要素に関係してくるため、非常に大切です。ブランド名が決められない場合は、ビジネス名ジェネレータを使用したり、グループインタビューを実施して顧客のリアルな意見を聞く機会を作ったりしてみると良いでしょう。
4. ブランドカラーとフォントを選ぶ
ブランドカラーはマーケティングにおいて非常に重要で、顧客の印象を大きく左右するものとなります。わずかな色味の違いも印象に影響します。例えば、ネオンカラーの緑は遊び心があるイメージに、森を思わせるような深い緑は落ち着いたイメージになります。
5. ブランドスローガンを書く
ブランドの世界観を一言で表す、魅力的なスローガンを考えましょう。スローガン自動生成ツールを活用したり、キャッチコピーを研究したりしたうえで、競合他社との違いや、ブランド独自のアピールポイントが伝わるスローガンを作成します。
6. ロゴをデザインする
ロゴは、自社ブランド商品、パッケージ、店舗やECサイトのトップページ、SNSのプロフィールなど、多くの場所で使用されるため、ブランド作りをするうえで非常に重要です。
6. ECサイトの構築やECモールへの出店を行う
商品をオンラインで販売するには、ECサイトを構築するか、ECモールに出店する必要があります。まずはブランドのコンセプトをしっかりと固めましょう。その後、ブランドカラーや使用するフォント、ロゴなど、ショップのデザイン面を決めていきます。
ここでは、簡単に本格的なネットショップを開設できるShopify(ショッピファイ)を使ったECサイトの構築方法を紹介します。
1. Shopifyの無料トライアルを開始する
Shopifyの無料トライアルを開始し、オンラインストアの設定を行います。
2. テーマを選択する
Shopifyテーマストアに行き、自分のブランドに合うテーマ(ECサイトのテンプレート)を選択します。テーマはアプリを追加したり、カラーやフォントを変更したりしてカスタマイズすることも可能です。
3. トップページや固定ページを作成する
最初に表示されるトップページを作成した後、配送ポリシーや返品ポリシー、お問い合わせページなどの固定ページを作成します。
4. 商品ページの作成とグループ分け(コレクション作成)を行う
販売する商品の写真を撮影し、商品説明を書いて商品ページを作成します。その後、同じ条件の商品をグループ分けしてコレクションにまとめます。こうすることで、商品を見つけやすいECサイトを作ることができます。
5. 配送オプションを設定する
利益を確保できる送料を算出し、Shopifyで送料設定をおこないます。
まずは配送対象とするエリアをShopifyで設定します。こうすることで送料の設定ができるようになりますが、送料設定には以下のようないくつかの選択肢があります。
- 配送プロファイルを使用する:送料を商品ごとに変える場合や、倉庫が複数あり配送先に一番近いロケーションから発送するなどの設定を行うには配送プロファイルを使用します。
- カスタム配送プロファイルを使用する:重量や購入総額に応じて配送料を設定する場合は、カスタム配送プロファイルを使用します。
- ローカルデリバリーの設定をする:実店舗の近隣エリアに住む顧客に商品を直接届けたい場合は、ローカルデリバリーの設定を行います。
6. 決済オプションを設定する
顧客が商品購入時に決済を行えるよう、Shopifyペイメントやサードパーティ決済を設定します。
7. ショップのオープンを告知する
仕入先を決めてブランドの方向性を固め、ECストアの準備が完了したら、実店舗の既存顧客やSNSのフォロワーに、以下の方法でショップのオープンを知らせましょう。
- メールでの告知:メールでオープンのお知らせを伝えます。初回購入者向けの割引クーポンを一緒に提供するのも一つの方法です。
- 店頭での告知:実店舗がある場合は、ドアや会計場所など顧客の目に入りやすいところにお知らせを貼り、ECサイトの開設をお知らせします。シンプルな方法ですが、顧客を直接ECサイトに誘導できる効果的なやり方です。
- SNSでの告知:すでにショップのアカウントをフォローしてくれている人にECサイトの開設を知らせ、ECサイトのURLを伝えることで、フォロワーを直接ネットショップに誘導できます。
- Googleビジネスプロフィールでの情報掲載:Google検索やGoogleマップ上で自分のショップ情報を管理・表示するための無料のツールである「Googleビジネスプロフィール」に、店舗の営業時間や住所、URLなどの情報を掲載しておきましょう。Google検索経由での訪問者を増やす手助けになります。
コーヒー豆販売に必要な許可
自分で焙煎したコーヒー豆をインターネットで販売する場合は「営業届」が必要ですが、あらかじめ加工されたコーヒー豆を販売する場合は許可や届出は不要です。また、新しくオープンするカフェで焙煎したコーヒー豆を販売する場合は、「営業届」のほかに「営業許可証」も必要となります。
営業届を提出する際には、食品衛生責任者を1名記入する必要があるため、食品衛生責任者の資格を事前に取得しておく必要があります。食品衛生責任者の資格取得は難しくなく、各都道府県でおこなわれている講習会を受講するだけなので1日で取得できます。
営業届は厚生労働省の食品衛生申請等システムからオンラインで申請可能です。
コーヒー豆販売に必要な表示
コーヒー豆を販売する際には「食品表示法」を守る義務があり、原材料や保存方法、消費期限などを表示する必要があります。
「食品表示法」が定める食品の表示項目の例は以下のとおりです。
- 名称
- 原材料名
- 内容量
- 消費期限または賞味期限
- 保存方法
- 原料原産地名(原料の原産地)
- 原産国名(最終的に加工された国)
- 添加物
- 栄養成分表示
- アレルギー表示
- 遺伝子組換え表示
- 製造者名または名称および住所
まとめ
個人でのコーヒービジネスは多様化しており、適切なマーケティング戦略と少しの工夫があれば成功する可能性があります。また、自分で焙煎したコーヒーを販売する際には、営業届の申請が必要です。この申請には、食品衛生責任者を1名用意する必要があり、さらに食品表示法に従って、原材料や消費期限などの情報を正確に表示する義務があります。
ECサイトを利用すれば、コーヒー好きの趣味をビジネスにすることも可能です。コーヒー豆の販売を始める際は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。
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よくある質問
コーヒー豆焙煎は儲かる?
コーヒー豆焙煎は儲けられる可能性があるビジネスです。適切なマーケティング戦略やニッチ市場の発見ができれば、今からでも成功できるでしょう。
コーヒー豆をネット販売する始め方は?
販売するコーヒー豆を準備して仕入先を確保し、ターゲットとするニッチ市場を見極めて、ブランドの方向性を決め、ECサイトを構築したりECモールに出店したりすることで、コーヒー豆のネット販売を開始できます。
コーヒー豆販売に関する表示義務はある?
コーヒー豆を販売する際には、食品表示法が定める内容をパッケージに表示する義務があります。名称、消費期限または賞味期限、保存方法、原材料名などを記載しなければいけません。
文:Momo Hidaka